「住職、ホームページ作ってくださいよ。元プロだったんでしょう?」
組寺(近隣の寺院コミュニティ)の集まりや、宗派の研修会。そんな場所で、先輩の住職からこう頼まれるたびに、私は苦笑いで答えます。
「作るのはいいですが、誰が更新するんですか?」と。
すると大抵、キョトンとした顔でこんな答えが返ってきます。 「更新? いや、一度作ればずっと見れるもんだろう? 立派なのを頼むよ」
……これです。これが、多くのお寺が陥っている「デジタル勘違い」の典型例です。
多くのご住職は、ホームページを本堂の前に建てる「立派な石碑」か何かだと思っている節があります。一度建立すれば、あとは雨風に耐えて勝手に威厳を放ち続けるものだと。
残念ながら、Webの世界に「不変」はありません。
更新されないサイトは、手入れされていない墓地と同じです。草が生え、荒れ果て、誰も寄り付かなくなります。そして、Googleという現代の神様(検索エンジン)からも見放され、誰の目にも留まらなくなるのです。
300万円かけて業者に作らせた、Flashが動かないままの重厚なホームページよりも、住職が毎日スマホで更新する無料ブログのほうが、現代においてはよほど価値がある。 元プロの視点から断言しますが、これは真実です。
モニターの光から、ロウソクの光へ
私はかつて、企業のWebサイト制作や、Webメディアの編集を行う現場にいました。
来る日も来る日もデュアルモニターに向かい、コードを書き、アクセス解析の数字とにらめっこする日々。そこにあったのは「どうすればユーザーに見てもらえるか」「どうすれば使いやすいか(UI/UX)」という、徹底的な「相手目線」の追求でした。
そして縁あって仏門に入り、今、私は法衣をまとい、お経を読み、法話をしています。
一見、真逆の世界に見えるでしょう? 最先端のデジタルと、千年以上続く伝統文化。
でも、住職になって気づいたんです。「あ、これ、やってることは同じだな」と。
Webサイトで訪れたお客様をもてなすのも、お寺で檀家さんをお迎えして傾聴するのも、本質は一緒です。
どうすれば相手の心に届くか。どうすれば相手の不安を取り除けるか。 そのための手段が、HTMLタグなのか、お経なのかの違いだけです。
デジタルは現代の最強の「方便」である
「お寺にデジタルなんて導入したら、ありがたみがなくなる」 「法事をオンラインでやるなんて、手抜きだ」
そんな声も、いまだに(特にお年を召した世代から)よく聞きます。ですが、少し視点を変えてみてください。
お釈迦様の時代、教えは口伝(声)でしか伝わりませんでした。 それが文字になり、経典になり、木版印刷になり、活版印刷になり、今はPDFやYouTubeになっています。
もしお釈迦様が現代に生きておられたら、間違いなくiPadや生成AIを使っていたはずです。なぜなら、その方が「より多くの苦しむ人に、速く、正確に教えを届けられるから」です。
仏教には「方便(ほうべん)」という言葉があります。 真実へ導くための、巧みな手段のことです。
私にとって、そしてこれからの時代の住職にとって、デジタルツールは冷たい機械ではなく、現代における最強の「方便」なのです。
この連載で伝えたいこと
この連載では、難しいプログラミングの話はしません。SEOの細かいテクニックも不要です。(そういうのは、餅は餅屋でプロに任せればいいのです)
ここでお伝えしたいのは、「デジタルの力を借りて、住職であるあなたの『人柄』を檀家さんや地域に届ける方法」です。
- 立派な伽藍(建物)の写真よりも、住職が毎朝掃除している寝癖姿をアップしよう。
- 難しい教義の解説よりも、住職が最近ハマっているサウナの話を書こう。
- 事務作業はクラウドに任せて、空いた時間で檀家さんの話を聞きに行こう。
「お寺の名前」だけで人が集まる時代は終わりました。これからは「住職の〇〇さん」という「人」に人が集まる時代です。
パソコン仕事はお経の邪魔ではありません。むしろ、山門を世界中に開け放つ、現代の布教活動そのものです。
さあ、食わず嫌いはやめて、まずはiPadを開いてみましょう。 失敗しても大丈夫。デジタルタトゥーが怖い? いえいえ、私たちは「懺悔(さんげ)」と「修正」のプロじゃありませんか。
次回からは、具体的なマインドセットと、最初の一歩についてお話しします。
【次回予告】 第1回:ホームページは「建立」して終わりじゃない、そこからが「修行(運用)」だ いよいよ第1章「マインドセット編」が始まります。なぜ多くのお寺のサイトが「廃寺(更新停止)」になってしまうのか? それは「石碑」と「Webサイト」を混同しているからです。まずは住職の意識改革から始めましょう。
🛑【この連載の続きはこちらから】 この連載は、有料マガジン『住職、そのHP誰が見てますか?元Web屋の寺院DX術』に収録されます。
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