私たちが生きる社会には、決してAIや機械には代わることができない、人の手と心だけが担える仕事があります。 それは、人の「命の終わり」に寄り添い、お見送りをする仕事です。
今回は、僧侶として数え切れないほどのお葬式の現場に立ってきた私が、どうしても伝えたかった感謝の言葉を綴ります。
病院のベッドから、葬儀場の祭壇、そして火葬場の炉の前まで。ご遺族の深い悲しみの裏側で、目立たず、しかし確実に汗を流し、心を砕いてくださっている医療関係者、葬祭業、そして火葬場のスタッフの皆様へ向けた、私からの思いです。
最期まで命の尊厳を守る、医療関係者の皆様へ
医師や看護師、介護スタッフの皆様。 治すことだけが医療ではないと、皆様の姿を見るたびに教えられます。
ご家族が少しでも心穏やかに最期の時間を過ごせるようにと、声のトーンを落とし、痛みを和らげ、優しく身体を拭き清めてくださるそのお姿。時に、ご家族と一緒に涙を流してくださる看護師さんを見ることもあります。 皆様が最期の最期まで「その人らしさ」と「命の尊厳」を守り抜いてくださるからこそ、ご家族は少しずつ、お別れの覚悟を持つことができるのです。その献身的な姿勢に、心から敬意を表します。
悲しみの中の羅針盤となる、葬祭業の皆様へ
葬儀社の担当者様や、式場スタッフの皆様。 突然の別れに直面し、悲しみで右往左往するご遺族にとって、皆様は暗闇を照らす確かな羅針盤です。
限られた時間の中で、ご遺族の希望を汲み取り、複雑な手配を滞りなく進めるプロフェッショナリズム。そして何より、私がいつも有難いと感じるのは、お寺や宗教者とご遺族との間を、きめ細やかに繋いでくださることです。 裏で走り回りながらも、ご遺族の前では決して慌てず、静かな微笑みで不安を取り除いてくれる。皆様のその働きがなければ、私たちは厳粛な儀式を執り行うことなど到底できません。
最後の「お別れ」を厳粛に支える、火葬場スタッフの皆様へ
火葬場にお勤めの皆様。 皆様の仕事は、ご遺族が故人様のお姿を見る、本当に「最後のお別れの場」を預かるという、極めて重い責任を伴うものです。
悲鳴のような泣き声が響く炉の前で、ご遺族の感情の波を受け止めながら、安全に、そして厳かに業務を遂行される皆様の姿には、いつも頭が下がります。収骨の際、ご遺族が少しでも悲しみを和らげられるよう、骨壺へのお納めを丁寧にサポートしてくださるその所作の美しさに、私は幾度となく救われてきました。 皆様の存在こそが、お見送りの儀式を完結させる最後の要です。
私たちは、たった一度の儀式を創る「チーム」です
死に関わるお仕事は、時に世間から心無い言葉を投げかけられたり、ご自身の心身に大きな負担がかかることも多い、本当に過酷な業務だと思います。
しかし、どうか忘れないでください。 皆様が日々向き合っているその仕事は、決して誰にでもできるものではない、極めて崇高で尊い業務です。
ご遺族にとって、大切なお見送りの機会は「一生に一度きり」しかありません。絶対にやり直しのきかないその瞬間を、病院から火葬場まで、それぞれの立場でバトンを繋ぎながら支え合う。 私たち宗教者も、そのバトンを受け取る一人に過ぎません。皆様と私たちは、悲しみを抱えたご家族を支えるための「一つのお見送りチーム」なのです。
どうか、ご自身の仕事に胸を張り、深い誇りを持ってください。 そしてこれからも、私たち宗教者と共に力を合わせ、ご遺族にとってのたった一度きりの大切なお見送りの時間を、最高に素晴らしいものにしていきましょう。
皆様のその温かい手と、プロフェッショナルとしての覚悟に、心からの感謝と合掌を捧げます。
